毒舌社長は甘い秘密を隠す

「なぁ、アルパ」
「フーン」
「お前、社長の秘密知ってる?」
「フフーン」

 この会社が、世間で一風変わっていると言われている理由のひとつは、社内にアルパカがいるから。
 もふもふとした触感は癒されるし、穏やかな表情は見ていて飽きない。

 社長の意向でアルパカを飼っているのだろうけど、なんでまた犬や猫ではなくアルパカだったのか……。


 沢村さんが秘書になって二年。
 特に変わったこともなくふたりは社長と秘書として、日々忙しくしている。
 業績も右肩上がりをキープしていて好調だし、俺の副社長としての手腕もきちんと評価してもらっている。

 だけど、社長の弱みは分からないままだ。
 少なくとも社長は沢村さんを気に入っていて、淡い思いを抱いていると思うのに、なかなか進展しなくてじれったい。

 おかげで、アルパに問いかける始末だ。


「千堂副社長、ここにいらしたんですか」
「あぁ、ごめん。今行く」

 秘書にアルパカと話してるなんて、見られてなるものか。

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