毒舌社長は甘い秘密を隠す
「社長、待ってください」
「もう決まったことだ。君が意見する時間も与えたのに、今さら撤回なんてできないからな」
リビングのソファに座った彼は、大きく背もたれに身体を預けた。
撤回できないなんて……。
いくらなんでも勝手すぎる!
社長と一緒に暮らしているなんて知られたら、社内でどんな目を向けられるか……。それに、社長だって女性を自宅に呼んだりすることはあるはずだし、そういう時はどうすればいいの!?
「なにを考えてるんだ? 言っておくが、君が思案していることはすべて無駄だよ」
「社長は、私の頭の中が見えるとでも仰るんですか?」
「あはは、そうだな。君の考えていることは分かるかもな」
絶対にそんなはずはないのに、余裕たっぷりの微笑みをこんな時に限って見せつけられてドキッとしてしまった。
「いいから早く来い」
彼が、両腕を広げて私を待ち構えている。
諦め半分で向かうと、手を掴んで引き寄せられ、社長の長い脚の間にすっぽりと収まってしまった。
「これからよろしくな、優羽」
隣に座った私を再び抱きしめてきた彼は、耳元で囁いた。