毒舌社長は甘い秘密を隠す
「え、えっと、あの社長!」
「なんだ」
抱きしめられたら、ドキドキする胸の奥まで見透かされやしないかと、焦れば焦るほど鼓動は速くなる。
「離してください」
「それじゃ、元も子もないだろ。この部屋着を着た君を抱きしめることで、俺が癒されるんだから」
「でも、社長が今抱きしめているのはアルパくんではなく、秘書ですよ!?」
「お前、ホントうるさい」
大きな手で口元を覆われた。
もう一方の腕は、私をギュッと抱きしめたまま離してくれない。
全身が沸騰するように熱くなってきて、逆上せてしまいそうだ。
しかも、私の気持ちを完全に無視した社長が、頬を寄せてきて息遣いまで感じる。
彼への想いを自覚したばかりなのに、突然の急接近と緊張で暴走する心臓の音が私から冷静を奪っていく。
だって、この状況って、社長と秘書じゃないもの!
どうしたらいいの?
このまま抱きしめられたままなんて、絶対に無理!!
「痛ってぇ!!」
混乱しながら状況を整理していた私は、無意識に口を覆っていた社長の指を見事にがぶりと噛んでしまっていた。