シナリオ・レッスン
大きく息を吐いて、続ける。

「俺のこと、追いかけてこの高校に来たんだ、とばかり思ってた。それは、俺の思い上がりだったのか?……この一年、いや、二年間、俺がどんな気持ちでいたと思う?」

透が目を伏せる。

「卑怯だよ、お前は。ずるい」
そうして今度は、鋭い目で見つめてきた。

「芝居じゃないよ。これは、演技じゃない。この気持ちは、ずっと、ずっと前から続いてる。本当は知ってたんだろ?だから、ここに来たんだろ?解っててここに居るんだろ?芳乃は卑怯……えっ、あ。ああっ。泣くことないだろ‼」

不覚にも涙が流れた。透はすっかりあわてている。

「悪かった、言い過ぎた。違う。傷つけるつもりで言ったんじゃない。」

「私が……」
声が少しかすれた。
「私が、傷ついて泣いているようにみえる?演劇部部長の洞察力も、分析力も、大したことないのね」

これ以上は、言わない。
言ってやらない。最初から私の方が……、

絶対的に不利なのだから。

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