夢に手が届くまで
憂鬱な気持ちでトボトボと廊下を歩く。


……分かってるもん、理数科に来ちゃいけなかったなんてことも。

痛いほどこの二週間で理解した。



でも、だからわたしなりに今の状況を変えたかったのに。

浜田先生のことばが頭から離れなくて、悔しくて、虚しくて。


涙が溢れたーー。




「あれ?椛?」


誰かがわたしを呼ぶその声に俯いていた顔をあげれば、化学のセミナーを片手に持った凪紗の姿が目に止まった。

そして、凪紗の顔を見た途端に我慢していた涙がぶわっと溢れ出して止まらなかった。



「どうしたの〜」


駆け寄ってきた凪紗は、わたしをギュッと抱きしめると幼い子どもを癒すようにヨシヨシと背中を一定のリズムで叩く。

凪紗の優しが嬉しくて、また涙が溢れたーー。



***



「大丈夫?」

「……うん…」



凪紗に一連のことを話せば、凪紗は怒って「浜田先生のとこ行こ!!」なんて言ってくれたけど。

会いたくなくて、首を振った。



泣いたからスッキリしたけどモヤモヤは収まらなくて。


もう、今日は帰ろうって思った時だった。



「佐伯?なーにしてんだ?」



聞きなれたその人の声に、弾かれたように顔を上げる。


わたしの顔を見るなり眉を寄せ険しい表情をしたのは、松崎先生だったーー。


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