夢に手が届くまで
「……なるほどな」


一通り聴き終わった先生は、私と凪紗を通行の邪魔にならないように、職員室前にある横長の椅子に座らせた。



「もう、物理なんか勉強しないもんっ……」


わかってる、そんなの許されない。


でも、悔しくてどうにかしてその怒りをぶつけたくて。

そんな私のちっぽけな抵抗。



ここ最近泣いてばかりだ。

理数科に来て何度目の涙だろう。



精神的に強くないし、先生達の言葉を受け止められる心もない。

自分が悪いけれど、どうしても悔しくて。



「佐伯それは違う。」


松崎先生の目を見ればあの日、4月19日。

私が初めて怒られて泣かされた人同じ目の先生。



なんで、この目の先生からは目が離せないんだろう。

その瞳に吸い込まれるように、私は先生の目から視線をずらせない。




「悔しいなら、浜田先生の説明なんかなくてもできるんだって、点数で見せつけてやれよ。」



「……っ。」



ああ……どうしてだろう。


どうして、先生の言葉はこんなにも説得力があってわたしに力をくれるのかな。



「大丈夫、できるから。1歩ずつ成長して行こう」



フッと口元を緩めた先生。

優しく微笑んだその顔を見たら、また涙が溢れて。



……わたし、一日に何回泣くんだろうな。

なんて思ったら「泣き虫」って、同じことを先生が言うんだもん。



泣きながら笑っちゃったよ。

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