夢に手が届くまで
「ほら、これしか居ないじゃん。あなた達さ理系甘く見てない?

1年生の頃はなんとかなってたかもしれない。

でも、勘違いしないで。それは、先生達が1を付けないようにしてただけで理数科でそんな甘い考え通用しないよ。」



厳しい言葉にだれも何も言わない。


……私も甘く見てた。

何とかなるって思ってた。



でも、授業のスピードも早くなって分からなくても寝ていても注意されなくなって。

理数科ってこんなに辛かったんだって、初めて気がついた。




「この中さ4月の初めの方に俺に助けを求めた子もいるよ。

責任をもってちゃんと行動できる人になって欲しい。」



先生と目が合うと優しく微笑まれる。



怒るけど、その中にはやっぱり優しさがちゃんとあって。


私はその優しがあることをみんなより知ってるから、何度でも先生に助けを求めに行ったんだと思うーー。



「名前呼ばれた人から取りに来て」



そう言われてみんながゾロゾロと並ぶ。

わたしもみんなに続く。



「佐伯、頑張ったね」


渡す時に一言かけてくれたその言葉。



ねぇ、先生気づいてた?


わたし単純だから、

先生の一言に喜んで。
先生の一言に泣いて。
先生の一言に落ち込んで。



でもね、先生の一言にこんなにも胸が温かくなるのーー。


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