夢に手が届くまで
数学の時間の前に、私は松崎先生の所へ足を運んだ。


「先生〜、ノート取りに来ました」

「あれ?佐伯、数学係じゃないでしょ」


職員室に入るなり先生のところまで向かうと、松崎先生は私を見なり眉間にシワを寄せる。


「あはは」


私は薄ら笑いを浮かべて、松崎先生にことの事情を話す。


「実は、数学係の子に"松崎先生と仲いいでしょ?持ってきてくれない?"って頼まれて」



他人からの断りをするのが苦手な私は、二つ返事でいいよと返答した。


「あ、そうなんだ。持てる?重いよ」

「はい、大丈夫です」



数学のノートが帰ってくる日はちょっとだけテンションが上がる日なの。

なんでかって?

それは、問題の最後に必ずメッセージを残していたから。



"頑張るから、お願いします!"

とか、

"数学8割とりたいです!"

とか、


小さなメッセージばかりだった。

それに一つ一つ返答をしてくれる先生だったから。



だから、余計に胸が苦しかった。





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