夢に手が届くまで
「もう松崎先生のところにヘルプ行きなよ」


「……やっぱりそうしようかな。」



この状況を変えたいと思ってるのも事実。


だから、怖いと噂の先生のところに行こうって決めたんだ。



***




ーーコンコン。


「失礼します。2年C組佐伯椛です。松崎先生に用があってきました。」



もう、職員室を入る時のお決まりのことば。

1年の頃は職員室が嫌いで呼び出しをされないといかなかったくらいだから、この言葉を言うのが久しぶり。



机の横から顔をひょいと出した松崎先生は、私の姿を見るなり手招きをする。



緊張しながら職員室の中をふみしめて歩く。


「……数学教えてください」


若干震えたその声。



松崎先生は顔を顰めながら「もう、わかんない?キツイなぁ」そう言って、難しい顔をする。

……ううっ、やっぱり手遅れ?


わかってるけど、どうにかしたくてきた。



「……フリぺでまってて」


「はい。」



フリぺとはフリースペースのこと。


友達同士教えあったり、質問したりするのによく使用する場所で20席くらいある所だ。



私は職員室を出ると、フリぺに行き、カバンの中からまだあまり使い込んでない問題集とノートを広げ、松崎先生を待った。



「おまたせ、どっち?」

「数2です。」


黒いバインダーを片手に、持ってきた松崎先生は私の横に腰掛けると問題集をのぞき込む。



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