桔梗の華 ~途中公開~
一晩寝て起きたら瑞様は朝食の支度をしていた。
「瑞様おはよう」
「おお、起きたか。顔を洗ってきなさい」
外に出ると天気も良く村の子供たちが
原っぱを駆け回っていた。
組み井戸に行き水を引き上げる
パシャパシャと冷たい水が気持ちいい
「私って意外に順応性あるのね…」
「おいおまえ」
「ひゃっ?!」
背後からいきなり声をかけられて
びくっと体が震えた。
「あー、神威おはよ」
振り向いたら腕を組んでいた神威がいた
ジトーーーと私の顔を舐め回すように
見つめてくる
「ねえ…私ってそんなに翠子様に似てるの?」
「なっ…似てねえ!」
「慌てる程似てるって事ね…でもね」
グイッと神威の顔に近づく
唾を飲み込む音が聞こえた
「わたしはわたしなの!桔梗って名前もあるの!」
私の剣幕に押されて黙りこく神威
分かった?と顔で訴えると静かに頷いた
「あんたって思ったより良い奴ね。封印されてるからどんな化けモノかと思ったけど」
「俺はいずれ大妖怪になるんだよ、ふんっ良い奴だ?笑わせんな」
むんつけた顔で身軽に屋根を飛び歩いてく
その後ろ姿を見て瑞様の家へと入る。
「まだ帰る方法が分からぬなら、神威と旅に出てはどうか?」
瑞様のいきなりの提案に
ご飯を詰まらせて噎せてしまった。
「なんの旅?!てかあいつと?!」
「ここにいても時間の無駄じゃろうからな。勾玉を沈める力くらい扱えるよう色んな景色を見てくればいいじゃろ」
要は冒険していく上で力を身につけろって?
まあ確かにここで何もしないでいるくらいならそれもいいかもしれないけど…
「でも神威は勾玉を狙ってるのにその勾玉を封印できる力をつける旅って理由で付いてくるとは思わないんだけど、」
「なーに、あやつは行きざる負えぬ故それにあやつにとっても成長する旅になるだろう」
あの単細胞男が成長できるのかな
でも瑞様の言う通り1人で行くのは
さすがに無理があるから神威に
ついてきてもらわないと旅なんて行けない
お茶を啜りながら瑞様は外に向かって
「そーゆことじゃ、神威」
「冗談じゃねえ」
ひょいっと瑞様と私の目の前に
神威が現れて爪を向けてくる
「なんで俺がこんな翠子の生まれ変わりなんかと!」
「あんたそれ失礼だからね」
「神威、おぬしも封印されていたのだ。力をつけなきゃ半妖のお前じゃ闇雲には勝てぬぞ?」
くっ…と悔しい顔になった神威は
その場に胡座をかきはじめた
「女…足引っ張るなよ」
余程闇雲との勝負が心残りだったのね
大人しくなった神威は考え事を始めた
「ここって戦国時代だからお風呂ないんだよね。水浴びしてくるから瑞様袴ある?」
旅に出る前に水浴びでもなんでも
身体を洗いたかった
神威の耳はピクっと動く。
「あんた覗こうとしたらぶん殴るから!」
「おめーの裸なんか興味ねーよ!」
瑞様はそんな私たちを見て
なんだかんだ上手くやれるなと
1人で頷いてた。