桔梗の華 ~途中公開~
外の様子は分からないけど
大人達の声が悲鳴へと変わり
俺達も不安になってく。
「怖いよ…」
震える鈴音の手を優しく握り
蘭丸と顔を見合わせて外の様子を気にする
他の子供たちが泣き出し
俺は落ち着けと声を掛ける
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせるように
「ほう…童子共がこんなに」
ハッと声がする方に振り向く
周りもビクっと肩を鳴らす。
何故だ。ここは結界が張ってあるはず!
「我がこのような軟弱な結界入れぬと思ったのか…くっ笑わせてくれる」
異様な妖気が濃く増していく
御堂の中心に黒いモヤが現れる
ひっ…と怯える鈴音の手をしっかり握り
黒いモヤから現れた男を睨む。
「妖怪退治屋も大した事ないんだ。」
馬鹿にするような言い回しに
俺に怒りが沸き上がる
懐に締まってある小刀を取り出して
その男目掛けて刃を立てる…
そのせいで強く握っていた手は解け
鈴音から感じていた体温は熱を引いてく…
「クソ!クソ!」
小刀を振り回しても軽く避けられる
「お前何が目的なんだ!」
「ほう、我に向けるその怒りの目は幼きながら珍しい。」
感心した顔をする男に益々苛立ち始める
小刀を男に向けるもやはり子供ながら
この男の妖気の恐ろしさに手が震える
それを見て男は鼻で笑う
「特に理由はないが…そうだな、暇潰しとでも言っておこう。」
暇潰しだと?それだけの理由で大人達は…
「許さない!」
怒りを含んだ声が隣に来る
「蘭丸!」
鈴音は?鈴音の側にいてやれ!
そう思っても蘭丸の怒りの様子を見ると否。
「お前らみたいな妖怪は許さない!」
「…ひ弱な子供に何が出来る」
ヒヤッとするくらい冷たい目で男は睨む
一瞬俺と蘭丸も怯む。それでも男を睨みつけた
「…ほう、面白い」
ニヤっと不気味に笑う男は俺と蘭丸の前から
一瞬にして消えた。
慌てる俺達の後から「きゃー!!」
鈴音!!!
男は鈴音の後ろに立ち鈴音の首を掴みあげた
「鈴音!」
蘭丸は取り乱して男に近づこうとする
でも男が放つ妖気に蘭丸の足が止まった
「お前!卑怯だぞ!」
俺の叫び声にフッと嘲笑う
周りにいた子供達も恐怖で動けない
「…り……」
鈴音は苦しみながら怯えた声で何かを
伝えようとするがその様子を見て
俺と蘭丸は焦る。
どうすれば…どうすればいんだ。
クソ…クソったれが…
目には涙が溜まりそれでも
憎しみと怒りを含んで男を睨み続ける