お見合い結婚した夫が最近おかしい件

「うん。高嶺奥様。それは高嶺があなたの前でかっこつけたいからだね。」

「おい。」

清人さんがいきなり不思議な事言い始めて、それを諌めるように発した高嶺さんの声は驚くほど低い。でも、清人さんはそんなことお構いなしに続けた。


「男はね、好きな人の前ではかっこつけたいものなんだ。」

「好きな人・・・」

それは、高嶺さんが私のことを好きってことだろうか。少なくとも清人さんはそう思ってるってこと？

でも、私は高嶺さんに好きだと言われたことはないし、高嶺さんの言動から私のことが好きなのかもなんて思ったことはない。


どう返答しようかと迷っていると、パンパンと手を叩く音がした。


「そこまでにしましょ。清人くん、あんまり千里さんを困らせないで。」

「だってさぁ～」

「ダメよ。」


久美さんに言われて、清人さんは口をつぐんだ。

どういうことかと理解できないままキョロキョロと3人を見たけど、答えてくれる人はいない。


「そろそろいお暇させていただきますね。」

「え？もうですか？」

まだ、うちに着いて30分も経っていない。


「今日は、ご挨拶だけさせていただこうと思っていたんです。それなのに清人君が迎えに来るなんて言うから。高嶺君が家で待ってたらいいって言ってくれたの。

本当は、一緒にご飯でも食べたいのだけれど、本当に食べられるものが限られているので。千里さん、今までは上司の奥様として接してきましたけど、これからは親戚として接してもかまいませんか？」


「はい！！ぜひ！！」

「じゃあ。つわりが落ち着いたら、またゆっくりお茶でもご飯でも行きましょう。」


「はい！楽しみにしてますね。」

「私も、楽しみにしてますね。」

にっこりと笑う久美さんは綺麗で幸せオーラがにじみ出ていて、見ている私も幸せな気分になった。

久美さんとまた会う約束もできて嬉しい限りだ。


そうして、久美さんと清人さんは帰って行った。帰り際、久美さんをお姫様抱っこして運ぼうとした清人さんを久美さんが断固拒否するといういざこざがあったが、2人は本当に仲が良いようだ。