お見合い結婚した夫が最近おかしい件
「あの。それで俺にどうしろと？」


まさか、仲を取り持てとでも？

「何もしないで欲しいの。」

「はぁ。」

「すっごいじれったいのよ。本当にじれったいの。奥さまは、千里さんとおっしゃるのだけど、頭も良くて、とっても良い方なのだけど、ちょっと鈍感なの。」

「はぁ。」

「すごくじれったいし、はっきり言って高嶺君がめんどくさいんだけど、下手にあなたみたいなイケメンが手を貸そうとするとこじれそうなのよ。」

「わかりました。」


これが、手を貸せというなら、面倒なことこの上ないが、放置しろというのなら何の問題もない。

だが、奥さんの千里という名前が引っ掛かる。

高校時代の友人の顔が頭をかすめた。

まさかなと、頭から追い出す。世の中そんなに狭くないだろうと。


実際、新しく上司となった兵頭高嶺専務は、柴田秘書から聞いた印象とは一致しない。冷静で合理的。この人の下ならば安心して仕事ができそうだと思わせる人物だった。

それに、直属の上司の奥様とは言っても、俺と奥様が接する機会は稀だろう。そんなわけで、俺は新しい仕事を覚えるのに集中することにした。

しかし、その数日後、世の中は意外に狭いのだということを俺は思い知ることになるのである。
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