お見合い結婚した夫が最近おかしい件
家についても、高嶺さんはまだ帰っていなかった。


時刻は20時前だ。


「帰ってるわけないよねー。」


多分、誕生日を祝ってくれるつもりなら事前に予定を確認されるはずだ。自分でも忘れていた誕生日を、夫が祝ってくれないからと言って不満を抱くのはどうかと思う。

ただちょっと、がっかりはしているかもしれない。ちょっとだけ。


「ご飯どうしようかなー。」


我が家は基本的に自炊をしない。私は全くできないわけじゃないけど、疲れた体でする気は起きない。高嶺さんもそこそこ料理はできるらしいが、なんせ彼は忙しすぎる。


でも、最近、2人で話す機会も増えてきて、家でゆっくりご飯を食べながら話すものいいんじゃないかと思い始めている。


冷蔵を開ける。

卵、人参、じゃがいも、玉ねぎ、ベーコン・・・料理の材料になりそうなのはこれくらい。

カレーは肉類がないな。オムライスならベーコンで作れるか?うーん。


ごそごそとキッチンをあさっていると、玄関から音が聞こえた。


あれ?と思っていると高嶺さんが入ってきた。



花束を持って。


「・・・・・おかえりなさい。」


「・・・・・ただいまです。」


「高嶺さん、早かったですね。」


「えぇ。千里さんこそ。早かったですね。」


「あーえっと。・・・早く、帰れと言われまして。」


「そうなんですね。」


「そうなんです。」


「では、誕生日おめでとうございます。」


高嶺さんは持っていた花束を差し出した。


「え?!誕生日のお花だったんですか?」


「そうですよ。何だと思ってたんですか?」


高嶺さんが苦笑する。


「だって。高嶺さん。たまに花束貰ってくるじゃないですか。」


「そうですが、それは千里さんのために用意したものです。」


そんなことを高嶺さんがいうから、私は嬉しくなった。
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