お見合い結婚した夫が最近おかしい件
その夜、そろそろ寝ようかという時間になって、高嶺さんが帰ってきた。


「ただいま帰りました。」

「おかえりなさい。」

「・・・・」


「高嶺さん、どうしました?」


高嶺さんがリビングの入り口で、無言で立っていたので声をかける。


「ちょっと考え事をしてただけです。お風呂に行ってきますね。」

「はい。ごゆっくり。」


寝室に行こうかと思ったが、高嶺さんの様子が気になったのでリビングで待つことにした。
どうせ、同じ寝室なんだから、寝室で待ってもいいのだけど、布団に入ったら5分で寝られる女なので、寝落ち防止だ。


本を読みながら時間をつぶしていると、高嶺さんがお風呂から上がって来た。

リビングに私がいるとは思わなかったのか、少し驚いているようにも見える。


「まだ寝てなかったんですね・・・」

そう言った高嶺さんの声には『寝ていて欲しかった』という思いが混じっているように感じた。


「高嶺さん」

「はい。」

「私に話したいことはありませんか?もちろん言いたくないなら言わなくてかまいません。」


「・・・西園くんとは・・・」


「圭が何か?」


「西園くんとは本当に付き合ってなかったんですか?」


私は、高嶺さんをじっと見つめた。
高嶺さんの言葉には、単純に疑うというよりも何か確信があって、確認しているように見えたからだ。

「誰かに、何か言われましたか?」


私の言葉に、高嶺さんは気まずそうに目をそらした。


「高嶺さん」

高嶺さんの手に自分の手を重ねると、高嶺さんはもう一度私の目を見てくれた。


「千里さんと西園君の高校時代の同級生という方が社員の中にいて、2人が高校時代に付き合っていたと言われたんです。」


「なるほど。その方の名前はわかりますか?」


「すいません。そこまでは…。」

「そうですか。」

少しの沈黙が流れた。


「私と圭は、本当に男女の関係になったことはありません。ただの一度もです。」

「はい。」

「ですが、高校時代、私たちが付き合っていると思っていた人はたくさんいました。」

「そうなんですか?」

「はい。何度も否定したんですが、信じてくれませんでした。もちろん、仲の良い友人達は付き合ってないことを知っています。
でも、そうでない人たちは私たちが付き合っていたと勘違いしていたと思います。
私も圭も、否定することに疲れてしまって、最後の方は聞き流していましたから。」

「なるほど。」


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