愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「気分はどうだ?」
スーツのズボンポケットに手を突っ込んだまま私を観察するようにじろじろと見ながら聞いてくる。
「大丈夫です」
「ちょっと触るぞ」
聞きながらも有無を言わせない口調で、私の頬に触れると目の下を下げて目を見てくる。そして、爪を押して見た後にさっと手首を持って脈を取り始めた。
その隙のない自然な動作に戸惑う。
なんなの、この人。まるでこれじゃぁ……。
「貧血だな。飯食えてるか? 栄養が足りない様子だが。念のため、点滴しておくか?」
「あの……、ここは?」
一方的に話す男性の質問には答えずに聞くと、不快そうに眉を潜められる。
「あの、どうして私ここにいるんでしょう?」
「俺の目の前で倒れたんだよ」
うん。そんな気はしていた。
だって、どう考えてもこの男性と話している途中までの記憶しかない。
倒れたのはわかった。それから?
「ここは病院ですか? あなたが連れてきてくれたんですか?」
「あぁ、目の前だったし、運んだ。悪いが、少し検査したからな。とりあえずは貧血だが、症状が続くようならでかい病院へ行け。血液検査するか?」
目の前? ということはここは藤堂クリニックということ?
見渡すと小児科らしく、可愛いキャラクターの人形やポスターなどが貼られている。
「いえ……。たぶん、疲労から来るものなので大丈夫です」