愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
そんなことを考えていたせいか、ボンヤリとしていたようで「里桜ちゃん?」と心さんに肩をポンッと軽く叩かれてしまった。
「あ、すみません」
「いいけど、聞いてた? 俺の話」
「藤堂先生が学会へ行くってことですか?」
「そのあと。ほら、聞いてないな」
心さんは呆れたように苦笑した。しまった。自分の思考の中に入ってしまって、心さんの声が届いていなかった。
「あのね、良かったら明日、夕飯一緒にうちで食べない?」
「心さんの?」
キョトンとした声で聞いてしまったが、心さんの部屋に来ないかってお誘いをされたってことだよね?
私と心さん、二人きりでっていうのはちょっと気が引けるのだけど。
別に心さんがどうこうって訳ではないんだけれど、やはりそこはねぇ……?
「あ、警戒したでしょう? 大丈夫、心配するようなことは何もしないよ」
「そういうわけでは……」
慌てて否定するが、心さんは微笑んでおり私の考えなどお見通しのようだった。