愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
12


心さんのことが胸に引っ掛りつつも、ついに今日は藤堂先生が学会から帰ってくる水曜日になった。
別に今日、会えるわけではないのになんだかソワソワしてしまう。
部屋も隣だし、もしかしたら夜にでも藤堂先生が訪ねてくるかな、とか。ご飯に行くのはまだ先としても、それまで会えないとかじゃないからその可能性だってゼロではない。


「なんか今日はウキウキしている感じだね、朝比奈」


鈴木主任が自分のデスクで頬杖をつきながら私を眺めている。


「そうですかね?」
「自覚あるくせにしらばっくれないの」


鈴木主任は笑いながら、私の机の書類を手に取った。


「あとこれを全部チェックしておけばいいのよね? これなら私がやるから、あなたはもう帰りなさい」
「え? いえ、やって帰ります」


主任に仕事を任せて帰るだなんて、そんな申し訳ないことは出来ない。
金曜日にある今回の企画の会議に向けた最終チェックだから、私がやらなくてはならないものだし、と鈴木主任から書類を返してもらおうとするが拒否された。


「別にこれ明日、私に最終確認してもらってから会議に出すつもりだったんでしょう? なら今しても同じよ」
「でも、チェックが途中ですし……」
「だから、まとめてやっとくから。ね?」


鈴木主任は席に座って中身を確認しだした。
確かに明日朝イチで最終確認してもらうつもりだった。でも、鈴木主任も残業しているなかで、今それをしてもらって先に帰るのは気が引ける。


「気にしないで。実は残業の後、旦那とご飯に行くのよ。まだそれまでに時間あるから仕事しているだけなの」


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