愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
電車が駅に滑り込み、気持ちも足も軽くなりながらホームへ降り立つ。
駅から見える藤堂クリニックは真っ暗で誰もいないようだ。そりゃそうか、と苦笑しながらマンションを見上げる。玄関側なので、帰っているか明かりは見えない。
「って、なに確認してるのよ」
自分の行動にボソッと自分で突っ込みを入れつつ、マンションへ向かう。
すると、クリニックの奥から心さんが出てきて自動ドアの施錠をしている。
そして、立ち上がって振り返り、私に気がつくと笑顔で手を振ってきた。
正直、あんなことがあったから心さんを見てドキッとしたし、多少の気まずさはあったけれど、そのいつもと変わらない笑顔に私も釣られて笑ってしまった。
「おかえり。今帰り?」
「はい。心さんも?」
「そう、俺が最後……」
と、心さんが笑って顔を通りの方に向けた瞬間、その
笑顔が凍りついた。
「え?」