愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
その目線を追うように振り向こうとすると、心さんは慌てたように私の腕を引っ張って身体の向きを変えられないようにしてくる。
「いや、何でもないから」
「なんですか~? もう」
その様子に笑いながら身体をねじると、目に写った光景に絶句する。
「じゃぁ、また来るわね。真紀」
マンションの門を出たところで、ショートカットの細身の女性が藤堂先生の腕に絡み付きながらそう言っていた。
私達から数メートル先の二人はこちらに気がついていない。
「気を付けて帰れよ、麗香」
藤堂先生は穏やかに微笑みながら、麗香と呼び掛けた女性の頭をポンッと撫でるように触っている。