愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
そして麗香さんはちょうど通りかかったタクシーを停めて手を降りながら乗り込んで去っていった。
藤堂先生はマンションへ踵を返し、そこでようやく私たちの姿に気がついたようだった。
「朝比奈? 心も。どうした、そんなところで」
「どうしたって、ねぇ?」
心さんは戸惑ったように頭をかきながら私をチラッと見下ろす。
私は言葉も出なかった。
今見た光景を頭が処理しきれていないのだ。
藤堂先生に至っては、全く変わった様子もなく不思議そうに首を傾げている。
「あ、いや。真紀、帰ってたんだね」
「さっきな」
心さんが取り繕うように明るく声をかける。
私は心臓がドキドキして声がでない。
「どうした? 朝比奈。具合でも悪いのか?」
私の様子に藤堂先生は近寄って顔を覗き込もうとした。