愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
今までのようにウキウキした気分で二人でご飯などいけるはずがない。
無意識に沈んだ顔をしてしまいそうだ。そうしたら藤堂先生もおかしいと気が付くはずだ。どうしたのか問われて、この気持ちを言えるはずがなかった。
「いやいや、行こうぜ」
籐堂先生は私が遠慮しているものだと思ったようだ。
「いえいえ。先生は仕事優先してください」
「朝比奈? なんで……」
「それに! 私今、秋の企画任されていてとても忙しいんですよ。この間は少し早く帰れたけど、いつも終電近くまで仕事で。だから先生と食事に行く暇がなくなってしまったんですよね」
あはは、と笑うと藤堂先生は気遣うような表情を見せた。
忙しいのは本当だ。残業も多い。でもさすがに終電間際まで仕事していることはないのだが、そこは盛らせてもらった。
「そうか。大変なんだな」
「はい。すみません。では」
そう笑って、藤堂先生の横を通り過ぎた。