愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~



「よく間違えられるんだよな。真紀って名前だけで、女医だと思ってくる患者。それで文句言われてもいい迷惑だぜ。調べてこない方が悪い。まぁ、大抵はリピーターになってくれるけどな」


点滴の針を刺しながら愚痴とも自慢とも取れるような内容をサラッと話す。
でも、女医ではなかったにしてもここは小児科だよね? 子ども相手の医師ってもう少し柔らかい雰囲気じゃない?
微笑みもしない、口も悪い医師なんて評判が悪そうなのに。やはり、顔ですか? お母さん方。

点滴はいつの間にか刺されており、針の痛みは感じなかった。
腕は悪くない? ……いや、注射くらいで判断できないよね。

それでも、一度閉めたクリニックをあけて時間外診察をしてくれたのだから悪い人ではないのかも。


「先生、ありがとうございました」


机で書類を眺めていた藤堂先生に声をかけると、ニヤリと笑われた。


「診察代はもらうぞ」
「わかっています」


医者だって商売だ。いくら突然のこととはいえ、私もそこはきちんとしたい。



< 12 / 262 >

この作品をシェア

pagetop