愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
藤堂先生と軽口を叩きながら話していると、少しウトウトしてくる。そして次に目を覚ました時には点滴が終わっていた。目に移った時計を見ると約一時間ほどが経過していた。
私が起きた気配に気が付いたようで、椅子に座って本を読んでいた藤堂先生が椅子ごと振り返る。
「目が覚めたか?」
「はい」
ぐっすりと眠っていたようで恥ずかしかったが、お陰でだいぶスッキリした気がする。
「立てるか」
診察台から身体を起こして立ち上がろうとすると、すかさず手がさっと差し出された。
靴を履くため、遠慮なくその手を取ると思いがけずしっかりと手をギュッと握られ支えられ、その手の大きさと温かさに不覚にもドキンと心臓が跳ねた。
何、ドキドキしているんだ。
彼氏とは別れ、職場も女性が多いせいか最近男性への免疫が落ちてきているのかな。
そのまま支度をしてクリニックを二人で出る。
「本当にありがとうございました」
藤堂先生がクリニックを閉めるのを待ってから、改めてお礼を伝えて頭を下げる。
「どういたしまして。さぁ、帰るか」
藤堂先生は軽く身体を伸ばしてから、クリニックの横にあるマンション門へ手をかけた。
「あの、ここで大丈夫ですから」
クリニックとマンションの入り口は隣だ。まさか部屋まで送るつもりだろうか。さすがにそこまで心配してもらわなくてもいい。
慌ててそう言うと、「わかってるよ」とポケットから鍵を取り出してマンションのセキュリティを解錠した。