愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「えっ……、まさか同じマンションだったんですか?」


オートロックだから住人しかセキュリティは解除できない。
藤堂先生が自分の鍵で開けて入ったということはそう言うことである。
そんなことってある? と驚きつつも藤堂先生に着いてエレベーターに乗り、そして……。


「嘘でしょう?」
「いや、マジ」


そう言って、藤堂先生は真面目な顔で部屋の表札を指差す。そこにはローマ字で藤堂と書いてあった。
その隣には私の苗字である朝比奈とかかれた表札があった。
まさかの隣の部屋だったなんて!

いやいや、そもそも他人のこんな小さな表札なんて見ないし、名前なんてちゃんと覚えてないよ!
百歩譲って隣の住人を覚えていなかった私が悪いのだとしても、まさか藤堂先生が住んでいるなんて思わない。

しかも、引っ越してきたときに挨拶に行ったら確か女の人が出てきた。だからてっきり女性が住んでいるものだと思っていたのだ。

ん? ……でも、あの時の女性は昨日叩かれた女性とは違ったような?


「彼女と住んでたんですか?」
「いや、彼女なんていないし独り暮らし」


独り暮らし……ねぇ。


「引っ越しの挨拶に行ったら女性が出てきましたよ?」
「あ~、あの時のは押し掛けてきた女が勝手に出たんだよ」


平然と言う藤堂先生に、この女たらしが! と声を大にして言いたくなったのをゴクンと飲み込む。



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