愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「ちなみに、昨日の女の人は?」
まさかと思って恐る恐る聞くと、「勝手に彼女面するから、付き合ったつもりないって言ったら殴られた」とシレッと答えたのだ。
まぁ、これにはある程度予想は出来たから驚かない。
「藤堂先生って、来るもの拒まずなタイプですか?」
呆れぎみに言うと、ニヤリと笑うだけで肯定も否定もしなかった。
これだけのルックスで開業医という肩書きを持てば嫌でも女性が寄ってくるだろうし、選びたい放題なのだろう。
でも、引っ越しの挨拶にきたことを覚えていたということは私のことは初めから気が付いていたのだろうか?
そう尋ねると、「いいや」と首を振られる。
「診察室で朝比奈の名前と住所を聞いて、そこで初めてお隣さんだって気がついた。挨拶に来たときは俺は出てないから顔を見てないしな。面識はなかったから」
だから変なストーカーとかじゃないから安心して、とでも言うような口ぶりだ。いやいや。別に変な勘繰りはしてない。
「じゃぁ、ゆっくり休んで。飯はちゃんと食うこと。いいな」
最後に医者らしく、釘をさして藤堂先生は部屋に入って行った。
その背中を唖然と見送ったあと、大きなため息が自然と漏れたのは言うまでもない。