愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「確かに昔、少しだけ付き合ったことがあったことは事実だけどな。今は全くない」
「でも、先生の部屋から出てきましたよね?」
親しげに二人がマンションから出てくるのを見た。
昔付き合っていたとはいえ、そんなに気軽に部屋に入れるのだろうか。
まさか、付き合ってはないけれど身体の関係は継続している……とか?
凄く嫌なことを考えてしまい、俯いて唇を噛む。
「どこから説明しようか……。麗香は昔勤めていた大学病院の同期で、この前の学会で再会したんだ。帰りの新幹線も一緒だったから、こっちに戻ってそのまま少し飲んだ。で、大切な話があるって言われた。話が話だから部屋に呼んだんだ。言っとくけど、下心は一切ないからな」
「それって復縁……とか?」
私の小さな声に、藤堂先生は曖昧に笑った。
「麗香はさっきの水島総合病院の跡取り娘なんだ。今病院が手薄だと言われた。少しでいいから手伝って欲しいと。プライドの高いあいつに初めて頭を下げられた」
あいつ、という親しげな呼び方に胸がチクンとする。