愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


うちのマンションは確か築3年だったので、このクリニックもそのくらいなのだろう。
病院なのに子供に小児科らしく配慮された作りに好感が持てた。
これであのイケメン医師だし、そりゃぁ人気は出るわな。

キョロキョロしながら待合室にいると奥の扉が開く音がした。


「さぁ、翔君。よく頑張ったね。もうおしまいだよ」


穏やかな優しい声と笑顔で待合室に出てきたのは、白衣を着た藤堂先生だ。
ポロポロと涙を溢しながらも白衣にしがみつく男の子をあやすように抱っこしている。

その姿に目が点になる。

……えっと、どちら様でしょう?
昨日と同じ藤堂先生のはずなのに、昨日とは違う人みたいな変り様なんですけど。
目を擦って何度も瞬きをしてみる。
しかし、いくら見返してもそこにいるのは昨日お世話になった藤堂先生で間違いはなさそうだった。
藤堂先生は待合室に背を向けており、私の存在には気が付いていない様子だ。


「お母さん、ただの風邪とはいえ熱はあるので温かくしてゆっくり寝させてあげてくださいね。それと消化に良いものと水分をよく摂らせてください」
「はい、藤堂先生」


藤堂先生の笑顔にお母さんはハートマークがつきそうなくらいの返事だ。
少しお化粧が濃いように思えるのは偏見だろうか?


「翔君、ちゃんとお薬飲んで寝れば治るからね」


腕の中にいた男の子を母親に渡しながら頭を撫でると、男の子は照れたように笑顔を見せて頷いた。






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