愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
19
あまりにもショックで、どこをどうやって帰ったのかよくわからない。
気がつけばマンションの前に立っていた。
「あ……鍵」
なぜだか扉の前で立ったままだった。鈍い動作で鍵を探すがこういうときに限ってすぐに出てこない。
「ない……。ないよ」
じんわりと目に涙が浮かんでくる。
なんなのよ、もう。
行き場のない怒りが込み上げてくる。ギュッと拳を握るが、どうにもできなかった。
すると、握り締めた拳を大きな手が包み込んだ。
「里桜。大丈夫か?」
顔を上げると藤堂先生が白衣のまま険しい表情で立っていた。その隣には心さんが心配げな顔をしている。
「なんで……」
「心が里桜の会社の側で麗香と会っているのを見かけたって教えてくれたんだ。何を言われた?」