愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
うちのマンションは三階建ての低層マンションで、一階には小児科とその奥に薬局が入っている。同じ建物だが、マンションの入り口はその横にあり、小さな門はオートロックの仕組みだ。
確かその小児科は藤堂クリニックという名前で、表の看板には藤堂真紀という院長の名前と診療時間が書いてあった。見たことないが、たぶん女医なのだろうと勝手に予想している。
「本当、サイテー! さよなら!」
そんな思考を遮ったのは、女性の怒りの声とともに辺りに響いた渇いた音。
うわ、叩かれた。修羅場じゃん。
ギョッとしながら横目でその光景を眺めると女性はヒールの音を鳴らしながら憤慨した様子で去っていき、残された男性は痛そうに頬を撫でていた。
やだなぁ。こんなところで揉めないでほしい。
辟易した気分でマンションの門を開けようと鞄を漁って鍵を探していると、こちらを向いた男性と目が合ってしまった。
ゲッ。目が合っちゃった。
ていうか、凄いイケメン……。
180センチ近くはあるだあろう高身長で、スタイルがいいからスーツが良く似合っている。そして暗がりでもわかるほど、整った顔立ちをした男性は頬を触りながらこちらを目を細めて睨んだ。
やばい!
見てるなって怒られる!
慌てて鍵を取り出してセキュリティを解除する。
そうして逃げるようにその場から離れた。