愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


雑談をしながら支払いを済ませた親子は藤堂先生に手を降ってクリニックを出ていった。
患者さんはこれで終わりなのか、クリニックにはホッとしたような雰囲気が流れる。


「先生、あの」


親子を見送ったあと、佐藤さんが口を開くがちょうど奥から「センセー」と看護師姿の年配女性と20代前半くらいの女の子が声を掛けながらやってきた。


「先生、片付けて済ませたから私はもう帰りますよ。今日は娘が帰ってくるからゆっくり出来なくて」
「先生、私も帰りまーす! 彼が迎えに来ているみたいなので」


それぞれそう声をかけると着替えるのだろうか、再び奥へ戻って行った。


「はいはい、田中さんも竹内さんもお疲れ様ー」


苦笑気味の藤堂先生が二人を見送り、診察室へ戻ろうとすると佐藤さんに「先生、待って」と肩を叩かれた。そして佐藤さんが指を差した方向を振り向いて驚いた顔をする。
やっと目が合ったが、なんだかこんな時どんな顔していいかわからず苦笑いしてしまう。


「朝比奈? 来てたのか」
「あの、昨日の支払いに。すみません、すぐに帰ろうとしたんですけど」


そう言って席を立ち、レジを開く佐藤さんに支払いをする。



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