愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「真紀の父親……叔父さんは医学会ではかなりの権威だ。今は心臓外科の研究でボストンにいるけれど、たぶんこの業界で叔父さんの名前を知らない医者はほとんどいないだろうね」
「そんなに凄い人なんですか?」
「研究馬鹿なんだよ」


藤堂先生は嫌そうなため息をつく。


「凄い人だよ。真紀だって子どもの頃はボストンに住んでて、高校から日本に戻ってきてる。叔父さんは真紀に心臓外科で勉強して自分と一緒に研究をして欲しかったんだ。でも真紀は途中でそれを辞めて、突然小児科に転向した」


どうしてだろう、と藤堂先生を見るとため息をつきながらソファーに座った。


「親父が医者になってくれって言うからとりあえずは医者になったけど、正直あまり興味はなかったんだ」


藤堂先生はサラッとそんなことを言うけれど、医者なんてなろうと思ってなれるものではない。


「心臓外科も患者が治るのは嬉しいけれど、いまいちピンとこない分野でさ。このままで良いのかなって思ってたんだ。そんな時にうちのジィさんを思い出したんだ」
「お祖父さん?」
「そう。高校の間は祖父さんの所に世話になってたんだけど、祖父さんも医者でさ、町のお医者さんってやつだった」


静かに相槌を打つが、親子三代医者の家系には内心舌を巻いた。藤堂先生が頭が良いのはもう血筋なのだろう。


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