愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「楽しそうだった」


藤堂先生はフッと笑顔を見せた。
穏やかな優しい顔をしており、お祖父さんを思い出しているのだとわかる。


「俺、町のお医者さんになりたいって初めて思ったんだ」
「でも専攻は小児科ですよね?」
「大人も診ることはあるけどな。でも小児科にしたのは、子どもに慕われている祖父さんが羨ましかったから。俺もああなりたいって思って、開業した」


チラッとクリニック内を見渡す。そうか。ここは藤堂先生の夢の場所なのだ。


「でも、婚約の話が出ているなら叔父さんは結構本気で心臓外科に戻そうとしているのかもね。さらにそこで、水島医師の娘と結婚したら業界での地位は確固たるものになる」
「そこだろうな。研究だってもっとやりたいように出来るだろうし」


そう呟いて疲れたように前髪をクシャッと乱す。


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