愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「そうか。わざわざ悪かったな。体調はどうだ?」
なぜか先程までの親子へ向けたような穏やかで柔らかい声は消え、昨日と同じ低いさっぱりとした口調になっている。
「お陰さまでもう大丈夫です」
そう言って、つい藤堂先生をマジマジと見つめる。
ネクタイをキチンとしめ、糊のきいた白衣にポケットから国民的キャラクター人形の丸くて茶色い顔が覗いている。ポケットに刺さっているボールペン類も子どもたちが好みそうなキャラクター物だ。
私の視線に、藤堂先生は居心地悪そうに顔をしかめた。
「不躾に見るのはやめろって」
「すみません。なんか、本当に小児科の先生なんだなと思ったもので」
「ほう、なんだと?」
藤堂先生は引きつった笑顔を見せながら、私の頬をむにゅと片手で下から挟んでくる。
やめて! 口がタコになる!