愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
真紀さんが私をジッと見てから、一歩こちらへ踏み出した。反射的に下がってしまい、掴んでいた玄関のドアノブを自分の方に引いて閉めようとした。
「待て!」
ドアが完全に閉まる前に真紀さんは扉を素早く掴んで、その隙間に足を入れた。そんなことをされたら、扉が閉まらない。
「は、離して!」
「それはできない。少し話がしたい」
話? そんなもの、今さら必要ないではないか。
「里桜、俺に話す時間をくれないか」
懐かしい、ずっと求めていた声で里桜と名前を呼ばれてドキッとする。ついドアノブを掴む力が弱まり、その隙にグイッと大きく開けられた。
「里桜」
五年前と変わらない、優しい呼び方。
なんで、やっと諦められると決断できたときに現れるのだろう。
突然のことで、戸惑いからどうしていいかわからなくなる。ぎっと唇を噛んでいると、携帯を握っていた腕を掴まれた。