愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
真紀さんは何か言いたげに一瞬私を見つめるが、軽く首を振って玄関から離れた。そして隣へ戻っていく姿は途中で玄関が閉まり、消えてしまった。
私の部屋の玄関が閉まった直後、隣の部屋も開いて閉まる音が聞こえたため、隣に引っ越してきたのは真紀さんに間違いはないのだろう。あのジョンも一緒かどうかはわからないが。
無機質な玄関扉をぼんやりと見つめながら、掴まれた腕の部分を擦っていた。痛くはないのに、温もりはすぐに離れそうにない。
「なんで……」
本当は聞きたいことがたくさんあった。
何しに来たの? いつ帰ってきたの? どうして連絡くれなかったの? もうずっと日本にいれるの?今、何しているの? クリニックはどうするの? 彼女はいるの? 私のこと、どう思っているの?
たくさん聞きたいことはあったのに、いざ本人を前にしたら声が出ない。
出でも拒否しか出来ない。真紀さんと話すのが怖かった。
ひたすら真紀さんを待ったこの五年は、無駄だったのではないか。
突然の帰国に、真紀さんのしたがっていた話というのをまだ聞く余裕を持てないでいた。