愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


***


春のイベントも終わり、仕事も一区切りついたこともあって最近は残業せずに家に帰れることが増えた。
定時で帰れるときはなるべく夕飯は作るようにしているため、今日も食材を買い込む。

今日は肉じゃがでも作ろうかな。
少し多目に作れば明日も食べられる。作り置きは結構便利だ。

そうしてスーパーに寄ってから家に帰ると、クリニックがまだ明るかった。
窓から微かに診察室が見え、藤堂先生の姿がうつる。

診察時間は過ぎている様だが、今日は混んでいたのだろうか。患者さんがまだいるようで、窓越しの先生は穏やかな笑顔を見せていた。

今まで忙しくて知らなかったが、このクリニックは繁盛しているようでいつも患者さんで溢れていた。
横目で見ながら通り過ぎようとすると、薬局から心さんがこちらに手を振っていた。


「あ、心さん」


私もヒラヒラと振り返す。
藤堂薬局は1階の入り口から真っ直ぐに行った奥にあるため、時々こうして見かけると手を振って挨拶していた。


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