愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「先生! 驚くから止めてくださいよ」
耳を押さえながら抗議する。
藤堂先生はイタズラなつもりだろうけれど、あの低くて甘い声で囁かれるほど心臓に悪いものはない。
驚き以外のドキドキも襲ってくる。思わず赤くなってしまった。しかし藤堂先生はそれに気が付いた様子はない。
「何、夕飯は肉だけなの? ワイルドだな」
「そんなわけないでしょう! 買い忘れを買いにきたんですよ」
「胸を張って言うことじゃねぇな」
確かに威張れることではないな。
藤堂先生は仕事帰りのようで、籠には出来合いのお惣菜がいくつか入っていた。
「先生こそ、人のこと言えないんじゃないですか?」
籠に目線をやりながら「ふふん」と反論すると、苦笑された。
「今日は忙しかったから、作る気になれないんだよ」
そう言う表情は、確かに少し疲れていそうだった。
今日は忙しかったのだろう。
「そもそも先生って料理するんですか?」
「当たり前だろ」
藤堂先生が料理しているところか。
少し想像したが、この人ならそつなく何でも出来そうだなと結論つく。