愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
ホッと一息ついていると、横から強い視線を感じた。
白衣も羽織らず、ラフな姿のままの先生が物言いたげに目を細めて私を見下ろしている。
その目に思わずたじろぐ。言いたいことはよくわかっている。もうこれは怒られても仕方ないのかもしれない。
「あの……、勝手なことしてすみませんでした」
とりあえず先手とばかりに謝罪の言葉を述べる。すると藤堂先生ははっきりと大きくため息をついた。
「そうだな。今回は仕方ないとしても、そう何度も同じことはできないぞ」
静かにそう釘を指す。何度も、には私も含まれているだろう。倒れたことは記憶に新しい。そう言われると胸がいたくなる。
そりゃぁ、医者だってボランティアではないし人間である。時間外以外でも毎回こんなことしていたら休むものも休めない。先生が身体を壊してしまうだろう。医者だって商売なのだから。
それでも。それでもさ。
「ごめんなさい。でも、あの時は藤堂先生しか浮かばなかったの。この辺詳しくないし、あのお母さんを何とかしないとって思ったら先生しか頼れなかった……」
俯いてボソボソと言い訳をすると、再び大きなため息と共に温かい手が私の頭を優しく撫でた。