愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
でも、と先生をチラッと横目で見ると大きな欠伸をしていた。
当の本人がこの様子なんだから、私が動揺したって仕方ない。そもそも動揺する意味がわからないわ。久々に男性と二人で出かけたから浮かれているだけなんだよね、きっと。
うんうん、と自分を納得させる。
そう思ったら少し気が楽になってきた。
「先生、寝ちゃうんじゃないですか?」
フフンと笑うと同時に会場が暗くなった。
始まるため、前を向きなおすと右腕に軽く先生の体重がかかる。「えっ」と思うと、先生が私の耳に顔を寄せて低くて甘い囁き声をだした。
「朝比奈が隣だから心地よくて寝ちまうかもな」
「っ!」
その声に背筋がゾクッとしてバッと耳を押さえる。驚きの叫び声を出さなかっただけでも誉めてほしい。抗議を込めて藤堂先生を恨めしげに睨むが、笑いながらが「シー」と唇に指を寄せていた。予告が始まると先生はもうスクリーンに集中している。
暗くて良かった。私、今絶対に顔が真っ赤になっているだろう。