愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


報告書を仕上げてから、会社を出る。

今日は20時には上がれたことに自分を褒めつつ、疲労と眠気で足元がふらつく。
お腹は空いているのに、食欲が出ないのはいつものことだ。食べる時間があるなら、早く寝たい。
よし!
明日から生活リズムを取り戻そうと心に決め、今日はもう寝てしまおう。

そう決めてマンション前に辿りついてハッとする。

マンションの門前に、昨日の男性が腕を組んで立っていたのだ。
暗がりでも、街灯がその顔を映し出しているからわかる。
あの女性と待ちあわせだろうかとも思ったが、ひとりだし、しかも私を見つけるとジッとこちらを見つめてくる。
目線が明らかに「待っていたぞ」と言っていた。

どうして? まさか、昨日のことでいちゃもんつけられるのかな。

嫌な気がして思わず止まりそうになった足を叱咤し、門前まで行き男性に軽く会釈する。
早く中に入ってしまおう。
変な人だったら怖い。
少し焦りながら鍵をかざそうとした手を大きくてごつごつした手に遮られた。


「ちょっといいか?」
「!」


そろそろと顔を上げると男性は私を見下ろしている。


「私……ですか?」


人違いで会ってほしいという期待を込めて確認するが、大きく頷かれてしまう。
なんで!
と思うが、思い当たるのは昨日の修羅場を目撃したこと。やはり、いちゃもんつけられるのだろうか。


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