愛されざかり～イジワル御曹司の目覚める独占欲～

私の頷きに、鈴木主任は「なるほどね」と大きく首を縦に振った。


「男の方が、朝比奈を好きだったんじゃない？」
「うーん……」


それだったらすぐに納得出来るのだろうけれど、藤堂先生からそんな様子は感じられなかった。
そんなそぶりや雰囲気など一切感じなかったからわけがわからなくなっているのもあるだろう。
そもそも先生が私を好きでたまらずキスしたなんて話があるわけがない。


「好きとかじゃないと思うんですけど……」
「じゃぁ、何？ お互い好きまではいっていないけれど意識している関係？ それ凄く面白いんだけど」


鈴木主任はなぜかワクワクしたような表情をしている。面白がっているのがわかるから、ついため息を漏らしてしまった。なんの解決にもなっていない。


「どうしたらいいんでしょう？」
「さぁね。そういうのはたくさん悩んだほうがいいと思うよ。自分の気持ちを見つめなおすのよ」


見つめなおすってどうやって？
私からしたキスではない。向こうからしてきたことだもの。自分の気持ちを見つめなおしたところでどうにかなるものなのだろうか。

また、もやもやした気持ちのまま午後の仕事に取り組むこととなってしまった。