愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「藤堂先生が?」


契約時にオーナーの名前を聞いたような気がするけれど、そこまではっきりとは覚えていなかった。それに契約には管理会社としていたから。


「俺じゃなくて、オーナーは俺の祖父さん。この土地は田舎の祖父さんの持ちものなんだ。古いビルが建ってたんだけどそれを3年前にマンションに建て直ししたんだよ」
「でもそのとき、真紀が住むこの部屋だけは広くしてもらったんだよね」
「身内の特権だな」


そう言ってビールを軽快に開ける。
なるほどな。だから一階に藤堂家の病院も薬局も入っていたのか。この建物自体が藤堂家の物なら納得がいく。
それに間に管理会社が入っていれば、お祖父さんはここに住んでなくても良いのだろうし。しかし、凄いな。藤堂家は資産家なのだろうか。

そしてチラッと部屋のなかを見渡す。
全体的に男性らしく落ち着いた色合いで、モノトーンが多い。部屋の中は思ったより片付いてあり、さっぱりとしていて綺麗だ。というか、そもそも物が少ない。


「ここと寝室は綺麗だよ。汚いのは書斎だけ」


私の心を読んだように、心さんはエプロンを外しながら答えてくれる。


「……詳しいですね。寝室事情まで」
「誤解だ! 朝比奈」


藤堂先生の焦ったような言い方に、心さんと目を合わせて笑ってしまった。






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