愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
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「朝比奈ー、なんだか今日は荒れてるね?」
仕上がった書類のファイルをドンッと机に置くと、後ろを通りかかった鈴木主任が苦笑しながら声をかけてきた。
ファイルは重さもあって勢いついて置いただけで、自分としては荒れているつもりはなかったが鈴木主任にはイライラしているように見えたらしい。
「何かあった?」
「何もないです」
「いやいや、朝から妙に殺気だって仕事してるよ? 仕事の効率は上がるからいいけど周りには良くないね」
鈴木主任は笑いながらやんわりと諭してくる。自分では気が付かなかったけど周りの人たちを見ると気遣うように微笑んでおり、鈴木主任の言う通りだったのだと知る。。
「あ、すみません……」
こんなの社会人として失格だ。仕事に八つ当りするのはいいけれど周りの人に迷惑をかけるなんてなんて嫌な態度をしてしまったんだろう。シュンとしていると、鈴木主任は時計を見てデスクからお財布を取り出した。
「お昼だ。朝比奈、近くに新しいイタリアン出来たから付き合ってよ」
そう言って私の腕をとる。
「ちょっ、主任!?」
「いいから、いいからー」
なかば強引にオフィスから連れ出されてしまった。