愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
「じゃぁ、今度うまい飯でも奢る。高級なレストランとか。どうだ?」
藤堂先生は解決の糸口が見えたような、少しホッとしたような顔をしている。その顔を見ると、もう怒る気にはなれなかった。
「仕方ないなぁ」
ボソッと呟いた言葉は、藤堂先生には聞こえずらかったのか「なんだ?」と首を傾げた。
「いいですよ。ただし、本当に有名で高くて美味しいレストランでお願いします」
「わかった」
藤堂先生は安心したような笑顔を見せた。私のあの怒りはどうやら藤堂先生には効いたようだ。
「でもな、朝比奈。あの時は、わざとお前を困らせようと思ってやったことじゃなかったんだよ」
エレベーターを降りてお互い家の前で話していたが、もう話も終わりだろう、と鍵を鍵穴に入れたとたんに藤堂先生はボソッと呟いた。反射的にパッと顔をあげる。
「……どういうことですか?」
「わかんねぇ。でも、身体が動いた」
「なにそれ……。身体が動いたからって、あんなの悪ふざけ過ぎます。……私、先生の気持ちがわからない」
ドアノブを見つめたまま、ついに本音が口から滑り落ちた。
アッと思うが、もう遅い。