愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
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藤堂先生からご飯を奢る、なんて言われて浮かれていたのも束の間。
いつの間にか梅雨の雨音に所々セミの鳴き声が混じりだした6月末。
私は秋の新作イベント企画の担当となり、毎日遅い日々を過ごしていた。それもあって、藤堂先生と会うことは皆無。隣に住んでいるくせに、こうもすれ違うのだから不思議なものだ。
「ご飯に行くなんて、夢のような話になっちゃったな」
今日もシャワーを簡単に浴びてベッドに倒れこみ、夢うつつでそんなことを思う。
それでも仕事を優先させているあたりが、まだまだ藤堂先生への気持ちが足りないのかな?
仕事は好き。仕事は優先。でもそんな中、藤堂先生を思い出して会いたくなる気持ちは膨らんでいく。
足りないなんてことはないのか。私は私なりに藤堂先生を想っているのだから。