愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
肩を掴まれた手が熱くて力が入っている。微かな痛みに戸惑いながらも、藤堂先生の様子に驚きを隠せない。
藤堂先生がこんなに慌てるなんて、一体なにかあったのだろうか?
「お前、大丈夫か?」
「え?」
「大丈夫なんだな?」
「は、はい。って、何がですか?」
わけがわからずキョトンとしているが、反面、藤堂先生は私の様子にひとりで安心しているようだ。
大きなため息とともに肩から手が離される。
「これ、お前の上司から」
藤堂先生に渡された袋の中を見ると、スポーツドリンクとパックのお粥、アイスノンなど風邪対策グッズが入っていた。そして、藤堂先生の手には鈴木主任の名刺がある。
渡されたその名刺の裏には『体調はどう?無理せず休んで。話、今度聞かせてね』と鈴木主任からのメッセージが書かれていた。
この綺麗な字は確かに鈴木主任のものだ。
「どうしたんですか? これ」
「今さっき、下でその鈴木さんに会ったんだよ。お前の部屋番号押しているのに出ないからオートロックが開かないって困ってた。何かあったのかもって心配してたぞ」
「主任が……」
鈴木主任、仕事帰りに寄ってくれたのだろうか。
熟睡していたようだから、インターホンが鳴っているのにも気が付かなかった。風邪で仕事を休んだ部下が出ないなんて、心配かけてしまった。
後で謝罪とお礼の連絡しなくちゃ。
「それで、どうして藤堂先生が? 鈴木主任は?」