愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


藤堂先生の後ろを見ても、鈴木主任の姿は確認できない。
というか、どうして鈴木主任ではなく藤堂先生が訪れて来るのだろう。


「マンション前でウロウロしてたから不審だろ? 一応俺もオーナーの身内だしな。声をかけてみたら、お前の上司だって言うし。こっちも名乗ったら妙に納得されてこの荷物託された。しかもお前、本当に出ないし本気で心配したぞ」


藤堂先生は眉を潜めた渋い顔で私を見下ろす。
なるほど。鈴木主任の名刺の裏に書かれた『話を聞く』と言うのは、このことか。
鈴木主任は私がいつも話していた人が藤堂先生だと気が付いたんだ。だから、荷物を託したと。


「具合は?」


黙っている私を藤堂先生はかがんで覗き込む。その近さについ一歩後ずさってしまった。


「熱があるんだって? 他に症状は?」
「あ、寝たらだいぶ良いです。ダルさも減ったし」
「そうか。とりあえず熱計れ。あとこれ冷蔵庫にしまうぞ」


藤堂先生は私の返答を聞く前にすでに上がり込んでいた。



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