愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


「そ、そうですかね?」


心臓が早鐘を打ちながらも、気が付かれないように素知らぬ振りをする。


「とりあえず寝てろ。この時間だと病院はほとんどしまっているな。風邪薬はあるか? それ飲んで、明日になっても熱が下がらないようなら診てやるから」


藤堂先生は私の腕をとるとそのまま寝室へ押し込んだ。
そして身体に力がない私は軽く押されただけで、アッサリとベッドに転がる。そしてベッドサイドにあった体温計を渡された。
あまりにも手際がよくて唖然とする。


「計らないなら俺がやるけど」


体温計を手にしたまま動かない私を見かねた藤堂先生が、Tシャツの首回りに手をかけようと伸ばしてハッとする。


「だ、大丈夫です! 自分でやります!」
「そりゃぁ、残念」


赤くなって慌てる私にニヤリと笑顔を落としてくる。
そして「キッチン借りるぞ」と隣のリビングダイニングへ消えていった。


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