恋を知らない

キョウの選ぶマリアロボットは、外見の傾向が一定していない。年上だったり、年下だったり、背が高かったり、低かったり、太めだったり、やせていたり。

ただひとつ、なんとはなしに感じることだが、どの女の子も首に首輪をつけられているような、というか、首輪が似合いそうな陰りをおびている。そういう雰囲気が彼の好みなのだろう。

「ああ、とってもかわいいと思う」

人の好みに文句をつける気はないので、そう答えた。

キョウが満足そうに笑顔を浮かべ、その背中から顔を半分出したカナが、ぴょこんと頭をさげた。

こんな幼い感じの女の子でも、ベッドの上では快楽に乱れ、歓びの声をあげるのだろうか、と、ぼくはついよけいなことを考えてしまった。

キョウが呼んだタクシーはすぐにやってきた。無人運転の水素自動車だ。有人運転のタクシーよりも安いから、高校生でも使う人は多い。

キョウが助手席に乗り、マリアをはさんでぼくとカナがうしろの席に座った。

無人運転タクシーの場合、必ず15歳以上の人間が助手席に乗って、行先を指示することになっている。大人に見えても、マリアロボットたちが運転を指示することはできない――という建前になっている。非常時はこの限りではないのだが。

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